As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
佳明は……最近苛立つことが多い。
私に対しては…驚くくらいに優しくて、大切にされていることが…伝わる。
けれど、彼のそのやるせなさをぶつける相手はなく……
以前のような、余裕は………感じない。
要因は………。
野球だった。
有名な大学への進学。
甲子園で活躍したヒーローが集う野球部で……。
彼の活躍の場は、ほとんど……ない。
ピッチャーというポジションに、控え選手は沢山いて……。
佳明もまた、そこで足止めされているかのように…
必死だった。
足掻いていた。
だから……
そんな彼を受け入れたいと思った。
多少強引でも、少しでも佳明の気が紛れるならば………。
けれど……、
思い違いだった。
私は…わかっていなかったのだ。
テレビの音だけが……
ずっと頭を駆け巡る。
何かが、音を立てて崩れていくのを……
感じた。