As Time Goes By ~僕等のかえりみち~





「もう……掻き乱さないで。私達のことは私達で何とかするし、もう不用意に…会いに行ったりもしない。」



「…上原……。」



「いいんだよ、中道。もう…思い出にしてさ。アンタはきっと…勘違いしてる。もう……あの時で終わった恋だよ。私には佳明がいるし……どうにもならない。」




「……思い出になんて…できるかよ。今目の前に……お前がいるのに。やっと…会えたのに。」




ああ……、




あの日と同じ。






ぼんやりと浮かぶ月が……





私の過ちを咎めている。






「…アンタのことは…忘れないよ。あの時が人生の中で一番楽しかった。きっと…何十年経っても…そう思う。けど、私の気持ちは……中道が私を置いていったみたいに……どこかに置いてきちゃったみたい。」




「……取り戻すよ。」



「無理だよ。」



「無理じゃない。」



「無理!」



「じゃあ…どうしたらいい?」



「忘れなよ、もう。」



「……忘れられなかったら?」




「……そんなの…、私は知らない。」




「強情っ張り!」



「………………。」



もう……何とでも言ってよ。







「……出直す。」



「は?」



「もっかい出直して…もう一度会いに来る!」





「……何度来ても……」




「だったら、そんな顔してんじゃねーよ。バーカ!!」




「………はあ?!」




「アホらし。もー帰るわ。」




ちょっと…、こんな中途半端で?




「…これで嫌でもお前は俺のこと考えるはずだ。里中のことも引っくるめて…きっと悩む。今日は…それだけでいい。また一に戻っただけだし。」




「……………。」




「お前に覚悟があったなら…、俺はあの時どんな手使ってでも、繋ぎ止めてた。今のお前にも…同じことが言えるよ。」




「それじゃあまるで私がアンタを……」



「じゃーな、上原。またどっかで会えるといいな。」



「……中道…?」




「……じゃ……サヨナラ。」











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