As Time Goes By ~僕等のかえりみち~






「お前は我慢強いから…。泣くならよっぽどのことなんだろうな。」



「…………。」



さっきまで躊躇いがちだった君の手が…



力強く、けれど驚くくらに優しく。私の頭を…撫でる。



「でも…、『我慢してないで…泣けるなら泣いた方がいいぞ。スッキリするし。』」



「…どっかで聞いたことある台詞…。」




「うん。…なあ、上原。」



「ん?」



「本当は、俺も泣きたい。」



「え?何それ。」



「お前…言ったよな。『私の前だけで、悔しさも弱さも…さらけ出せばいい。誰が何と言おうと、私だけはアンタの味方だ』って。その言葉に…俺は散々励まされて…ついでに翻弄されてきた。手を離したのは自分なのに……。なのに、柚を忘れることはなかった。野球を見に来てくれた時も…どうしてあんなに遠くにいるんだろうって、何もできない自分に腹たって…泣きたくもなった。なのに…、今、目の前にいる。俺にとっての…唯一の泣き場所はここだと…思い知らされる。」



「中道………。」



「けど、いつかみたいに…お前、俺の分まで泣いてない?」


「…………。」



「……なんて…、自惚れかな。」




違うよ…、中道。


きっと自惚れなんかじゃない。


だって会ったその瞬間から……君は泣きそうな顔してる。




だから……


だからきっと……



私の涙は止まらないんだ。






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