As Time Goes By ~僕等のかえりみち~







「…どうせ泣くなら…玉砕してからにしとく。」



「……え?」











中道は…一度私から離れて。





真っ直ぐに…





私を見つめる。






夕焼けに染まる君の顔は…



あの頃よりもずっとずっと大人びていて、



少年のようなあどけなさは…もう微塵にも残されてはいない。




けれど、確かにそこにあるのは……。




大きな『自信』。





歳を重ねた分だけ…


大人になった分だけ…


昔のように、必死さも、純粋さもないかもしれないけれど。


代わりに生まれる…余裕。













「上原。」




「…は、ハイ。」




「ただいま。……俺…、上原を奪いに…帰ってきた。」



「…………!」




「…お前はいなかったけど…、いずれは夢を叶えて戻ってくるってわかってたから……。だから、今度は…待ってた。」




「…うん。」



「今度はさ…、もうひとつの夢を叶えたい。」



「……もうひとつ…?」




「何回も何回も…夢を見た。この道を…上原と一緒に歩く夢。」




「…………。」



「どんなに時が流れても…見る夢に変わりなんてなくて。いつまで理想抱いてんだと思ってきたけど…。そうじゃなかった。忘れたくても…忘れられなかった。あの日の続きを…まだどこかで願ってきた。上原……、ずっとこんな日を待っていたのは…俺の方だったんだ。」




「…中道……。」



「…ん?」



「『ただいま』…。」



「うん…。『おかえり』。なあ……、俺も、もう帰っていい?上原の所に。」



「……ん。遅いくらいだよ。」




「お前がソレ言うな。」





中道の大きな手に引き寄せられて……





私は、君の胸にすっぽりとおさまる。




伝わってくる鼓動が…




夢ではないのだと、教えてくれた。



私は君の背中に手を回し…、ぎゅっと少しだけ強く抱きしめる。




「……ただいま、上原。」

中道が…それに応えるかのように。

もっと…抱く力を強めた。





「……おかえり。」










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