As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
結の瞳に……
私はどんな風に映っているのだろう。
全てを見透かされてる気がして……
直視できなかった。
「柚が誘われたんでしょう?」
「いや、誘われたっていうか……」
暇な【野球バカ】が私くらいだっていうだけで……
私だから誘われたっていう理由はない。
「里中くんとか野球部の人達って県大会前じゃん?だから…一緒に行く相手がいないんだって。」
「…なら…、2枚買う意味わかんなくない?」
…そうきたか。
そうだよ、確かに何で2枚…?
「…貰い物かもよ。手に入ったって言い方だったし。」
「……。ふ~ん…。」
…納得した?
「てか、中道も仕方ないって感じだったし、ウン。だから…誰が行っても同じだよね。」
「………。」
…なぜに…
無言?
「…なら…、手っ取り早く私を誘ってくれれば良かっのに。」
「………。」
私だって…
そう思ったよ。
そしたらこんなややこしいことにも、
誤解を招くようなことも……
なかったじゃない?
…ん?【誤解】…?
「…そうだよ……。」
「……?」
これは、誤解。
完全なる誤解だ。
私の気持ちに、
あいつの気持ちに、
結が心を痛める理由なんてない。
私……
何オタオタしてたんだろう。
「…私が教えてあげる。プロ野球のルールとか、楽しさとか…。そしたらさ、中道との会話も弾むじゃん?あいつは根っからの野球バカだから。」
「…ふ~ん。柚たちってそんなに野球の会話で盛り上がるんだ?」
……しまった。
墓穴?!
「でも、まあ…いっか。ぜひお願いします。」
「…よしよし。まずは野球選手の名前からだね!善は急げ!えっと…テレビ中継は巨人戦が多いから……、あ。ちょっと待ってて。」
私はなるべく結と目線を合わせないようにと…、
すぐに背を向け、結の部屋を後にした。
…パタン…
【とん】っとそのドアにもたれ掛かり…
小さく息を吐く。
一体何だというのだろう。
胸の中がざわざわと疼く。
ただ……
結の恋を純粋に応援しようと思った。
それだけなのに……。
「…私……、アタマおかしくなったのかな。」