As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「ねえ、アンタは何で入らなかったの?」
すぐ傍から……、また、同じ質問の声。
聞き覚えのない女の声……。
違和感を覚え、俺は不意に…その声の主を辿る。
「……………。」
そこには……
二人の女。
一人は背の高いベリーショートの女。
同じ…クラス。
そして……
俺とは反対側。
そのグラウンドをじっと見つめる……
小さくて、華奢な女。
「…うん、もう青春は謳歌したからいーの。」
俺の言葉を繰り返したかのように答えたのは……
小さい女の方だった。
『もしかして…。さっきの会話、聞かれてたか?』
そいつ等の動向を横目で窺っていると…。
目が合った小さい方が…、『くすり。』と笑みを漏らした。
「…………。」
目が合った手前、仕方なく微笑み返す。
「ねえ、あなたも新入生?」
「………。そうだけど。」
なつっこい笑顔。
誰ふり構わず愛想よくするのは……
こちらとて同じ。
けど……、妙に男慣れしてるのか、そいつは何の躊躇いもなく……
質問を続けた。
「…名前は?」
「……中道だけど。」
「…やっぱり!そうだと思った!」
「………。」
大きな瞳をキラキラとさせて、また、ふわりと……笑う。
「……私と同じだね、中道くん。」
『「同じ」…?何が?』
よくよく見ると……
大きな瞳に、長い睫毛…。
少々化粧で盛られてはいるのだろうけど、それを差し引いても割と整った顔立ち…。
おまけにゆっくりとした口調で相手との共通点を探る辺りは、そう…、モテ女の手法。
「そーだね。」
苦手なタイプ。
俺は適当なまでに簡単に返事して……、
また、野球部へと視線を戻した。