As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
けど…、
もし、私が最後にクジをひいたなら……
私はまた、アンタの斜め後ろだった…?
私は……
前より小さくなった奴の背中をじっと見つめた。
しばらくすると……
身体を後ろに向けて、何やら律と話し始めた。
あのポジションにいるからこその特権……。
「………?」
特権だなんて…、
私、何思ってんの?!
何だか自己嫌悪に陥りながらも……
黒板の文字を見つめる。
座席表の自分の名前すら……
見えない。
「ねえ、三井くん。」
「ん?」
私は隣りの眼鏡男子・三井くんに声を掛けた。
「…黒板、見える?」
「……?眼鏡掛けてるから見えるよ。てか、裸眼は無理。」
「…だよねぇ。」
「上原さん、もしや見えない?」
「…ご明答っ。私もいよいよコンタクトかあ…。」
「眼鏡も侮れないよ。目ェ渇かないし、痛くない。」
「…へぇー…、あ、でもそうだよね。」
「掛けてみる?」
「…あははっ、うん!」
私は躊躇なく三井くんから眼鏡を受けとった。
早速……
装着する。
「……うっ。目が疲れるしボヤける~。」
「あはは!度が強いし乱視入ってるから。でも眼鏡最高!」
「………。」
…三井くんて…、意外と明るい人なんだ。
あ。
笑顔がカワイイ。
そうか……、
担任が言っていたことも一理あるな。
クラスメイトの新たな一面を発見できる。
三井くんが隣りで…、
良かったかも…。
「…先生!」
…ん?
中道が、手を挙げている。
しかも……
何故こっちを見てる?!
「…席替わってもいいっスか?」
一同唖然として…
中道を見つめる。
裏工作までして念願の席になったのに…
何してんの?
「…上原。お前、こっちに来れば。」
「……は?」
…私?!
「…黒板、見えねーだろ。」
ニコリとも笑わずに……
中道は言葉を続けた。
「…そうだけど…、大丈夫だよ?」
「……いーから。」