As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「…………?」




「中道。お前、もしや一番後ろがいいんだろ?」



「……そうとも言う。」




ドッと笑いが起きるが……、



中道は相変わらず表情を崩さない。




「…眼鏡かけるよりマシだろ?」



「………!」



その言葉でようやく……


私が、三井くんの眼鏡をかけっぱなしだったことに気づく。



「三井くん、ありがとね。」



慌ててそれを返すと…



机を運んできた中道が、しっしっと手で追っ払うような仕草をした。




「………。わかったよ。…ありがと。」




優しさなんだかわからないが……



不機嫌そうな中道に、(一応)礼をする。



……無反応。



一体、何なのさ……。





私は椅子を机に乗せると……



ヨタヨタと、その場を後にした。





「おかえり~。」



斜め後ろから、律が意味深な言葉を投げ掛けてきた。



「りっちゃ~ん、近くなったネ!」



私は素直に喜んだが…



律は何だか複雑そう。



「…かえって火をつけたようだね。」



「………?」



は……?



「全く子供じゃないんだから…、ねえ?」



「…何、何の話?」






「上原っ、落合っ。あんまりうるさいと…、席替えするぞ?」


先生のごもっともな言葉に…




「「……はい、すみませんっ。」」



私たち二人は、素直に謝罪した。









「上原ぁ~。」



放課後…、



教室を出ようとドアに手を掛けた私の背中に…



あいつの声。



「……何?」



私は振り返らずに前を見たまま返事した。



「聞き忘れてた。」



「………?」



「オマエ、どこのファン?」



……。
ファン?

ああ、そうか。




「今日ナイター中継されるチーム。」



野球の「や」の字が出なくても成立する会話。



だってうちらの共通点ってそのくらいしかないじゃない?



「……。どっちだよ。」



「…そうだなあ…、つい近年まで私と同じ名字のピッチャーがいたチーム。」



「ふーん。」



「……ねえ。」



「…あ?」


「アンタは?そういえば聞いてなかった。」



「ああ。俺は近年道頓堀からカーネル…」


「…阪神ね?」


「そう。」


「…ふ~ん。」



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