As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「なあ。」



「…まだ何か?」



「集合時間、1時でいいか?」



「……うん、多分大丈夫。」



「…じゃあその時間に、市役所前のバス停で。」



「…ん。了解。じゃ……。」




結局…、私は、一度も振り返ることはなかった。



別に嘘をつくつもりなんてないのに……



後ろめたさを拭いきれない。



中道の反応が怖くて……、素直に伝えることができずにいたんだ。





なのになぜだろう……




後ろ髪がひかれる。




「…中道。」



「ん?」



「…さっきはありがとう。お蔭様で字、ちゃんと見える。」



あんたがいた場所から…


同じ景色を眺めることができる。



「………。別に。お前の為じゃない。」



「……。そう。」




それきり…、
私も中道も、何も言わなかった。








「…バイバイ。」



奴が、ボソッとひと言…
あまりにもらしくない挨拶をするから……




私はちょっと拍子抜けしてしまった。




「…うん、また日曜日。」




会う訳ないのに……。


会うのは結だとわかっているのに…。




馬鹿な返事を返す。




この時……




中道のこの言葉が、現実となってしまうなんて………



まだ、知る由もなかったんだ。










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