As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
東北高等学校陸上競技大会。
4日間に渡って行われる大会。
私は出場する仲間の応援と、自分の競技…、100M走を見に、ここへとやって来た。
2日目……。
女子100M走の決勝の舞台。
観客のスタンド席から見下ろす選手達の姿が…
思いの他、小さく感じていた。
きっと私は、嫉妬や羨望の眼差しで…
それを見ていたのではないだろうか。
篠塚先輩は準決勝で敗退。
予選一位通過した選手のタイムに…
私は、ギュッと拳を握りしめた。
…勝てたはずだった。
過信しているのかもしれない。
自信過剰なのかもしれない。
私は私を買い被っていて……
それなのに、今…
走ることに対する絶対の【自信】が、音を立てて崩れていっていた。
向かい風が吹く中で…
ピストルの音が響いた。
たった十数秒間の世界。
それがこんなにも長く感じるなんて……。
瞬きをする時間が惜しかった。
なのに私は……
目を閉じる。
自分が走るそのイメージを、脳裏で思い巡らす。
大きな歓声に……
ハッとして目を開けた。
夢の中の私は、まだ……
ゴールなどしていない。
電光掲示板にタイムが表示される。
「…ハハ…っ。」
目頭が…
じわりと熱くなった。
「…馬鹿だ、私……。」
私はいつの間にか立ち上がり…
泣いていた。
「…柚……。」
紗枝が私の肩に手を置いて…
何度も何度も、まるで励ますかのように…
繰り返し、叩いた。
敵うわけがなかった。
敵うはずがなかった。
だって……
そうでしょう?
優勝した選手が……
スタンドに向かって手を振っていた。
彼女のタイムは……
私の自己ベストを上回るタイム。
こんなところで躓く私に、
怪我をした私に、
……敵うわけがなかったのだ。
「柚。…わかってるよ、私は。アンタの実力を知ってる。負けるはず……ないじゃない。」
「……紗枝……。」
涙が……
止まらなかった。
紗枝の優しさが嬉しくて、悔しくて、どうしようもなくて……
しがみつくようにして……
泣いたんだ。