As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
地元に着いた頃には…、


辺りはもう暗かった。



駅からの帰り道を、私はトボトボと歩く。



寂しくならないように、なるたけ街灯のある大通りを選んでは歩いた。




「……柚ちゃん?!」



大分歩いて、やっとたどり着いたコンビニの外で……



駐車場にたむろしていた男の集団の一人が……


声を上げた。



…あ、野球のユニフォーム。


…てか…、うちの野球部じゃん。



よくよく見ると……



「…里中くん?」


店内の光でようやく顔を確認した私は、ホッと胸を撫でおろした。




「…あれ、ジャージ?陸上部今日部活だった?」


「…ううん、大会の帰り。先に帰ってきたんだ。」


「…ああ、そうか…。」


気を遣うようにして、里中くんは私の足元にチラリと目をやった。


「足は…、もう大丈夫?」


「うん、全然!早く走りたいくらいだよ~。」


自分でも驚くくらいに…
そんな言葉が飛び出していた。



「…俺も早く見たい。」


「…え?」


「柚ちゃんが走るとこ。」


「……ありがと。」


「…ん。」



里中くんは照れ臭そうに…


視線を落とした。




「……悪ィ、俺先帰るわ!」



里中くんは他の野球部員にそう断ると…、


再びこちらに振り返った。



「…て訳で、一緒に帰ろう。」



「…え。…は?私と??」



…何で?



背後から冷やかしの声が上がってますが…?



「…嫌ならそう言って貰って構わないけど……」



あきらかに、ショボンとしてる…?



「嫌なんてそんなことは!てか…、何で?」



「…ん?一緒に帰りたかったから。」



…答えになってませーん!



「まあ、いいじゃん。行こ。」



里中くんは、私の手からひょいと荷物を取ると…


自転車のカゴに乗せた。



野球部の大きなバッグを斜め掛けして…



自転車を押す。



「…里中くん家ってこっちの方なの?」



「うん、そうだよ。」



顔が笑ってる…。



「…嘘でしょ?」



「…バレたか。」


「遠回りにならない?大丈夫?」



「いや、むしろそうさせて。うちの【おっかあ】うるさいから、できれば遅く帰りたい。」



【おっかあ】!?

意外な呼び名…


サラッと【かあさん】とスマートに呼びそうなのに……。



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