Ａｓ Ｔｉｍｅ Ｇｏｅｓ Ｂｙ ～僕等のかえりみち～

「好きとかそういうのは、知ってから…、うん、ちゃんとお互いを知ってからじゃないとわからないよな。」



「………。」



「こうやって…、普段通りの柚ちゃんでいて。俺も…素のままでいるから。」



「…素のまま？」



「なんてーかさ、俺、どうやら誤解されてるみたいで…。人に好かれる程優しくないし、器用な人間って思われてるけど…、それって全然違う。」



確かに……
イメージとは違っていたかも。



「わかる人がわかっていればいいけどね。今だってさ、実はすげー緊張してる。」



「…どこが？」



「………。さあ…。けど、上手く話せない。なのになんでかなあ……。安心する。」



「…………。」



「…柚ちゃんを知る度に、そう思うのかもしれないな。」



里中くんは、ひとつひとつ言葉を選ぶようにして話していく。


彼が発するそれらが…、まるで私の心に寄り添うようにして響いていく。



不思議な人……。



逆にこっちが素直になれる。



アイツとなんて、まともに会話にならないもんな。


こんなに素直に……


お互いを知ることなんて、できないだろう。



…てか、アイツが阪神ファンだなんてつい最近知ったばかりだし……。




「…有り得ない。」



思わずついて出た言葉に、私はハッとして口を覆った。



「……何が？」



キョトンとして私を見る里中くん。




てか、なんで、どうして今あんな奴のことなんて……。



「…何か妄想してた？」



「…何故それを…。」



「結ちゃんから聞いた。たまに妄想して自分と会話しちゃうって。」



結ってば、そんなことまで……。




「言ったろ？色々聞いたって。…だから…、今、柚ちゃんの中にいる奴が誰かもわかってる。」



……何言って……



「でも、やめとけよ。」



「…里中くん…？ナニ言ってるの…？」



「…あいつと柚ちゃんは…、合わない。」



「待って。何か誤解してない？私はあんな奴…」



「【あんな奴】？…柚ちゃんこそ誰のこと言ってる？」



「………！」



「…上手くなんていかないよ。俺には…わかる。」



「待ってよ。憶測するのは自由だけど、勝手に私の気持ちを決めつけないで。」



「………。」



「…私がいつ、アイツを好きだと言った？」