対話屋

目覚

「もう ずいぶん経ったな……」
男が古びたパイプイスにドカッと座った
ギィ ギィ ギィ 軋む音
今にも崩れそう
しかし男はそんなこと気にせず疲れた顔でボーと虚空を見ていた
「ふぅ――……もう……明るいか」

男の思考は働いてなくただ息をしている状態
そして天井にあるひとつだけの窓を見た
「……熱い……」
体全体に降りかかる光に男は少し感動を覚えた

ガチャン！
工場らしき扉が開いた
油くさく いろいろな機械の部品が転がっていた
「咲鐘 悠里さん 出来たんですね？」
黒いスーツを着た男が入ってきた

咲鐘悠里と呼ばれた男は言った
「あぁ……出来たよ……だいぶかかったな」
悠里は油で黒くなった指を見た

「そうですか… ありがとうございます」黒いスーツは言った



「俺を殺すか……？」
悠里は後ろにいる黒いスーツに言った 何か察していたかのように
「………ハイ」
黒いスーツはそう言い小さい鉄の塊を取りだし悠里の頭に静かにゆっくり向けた

「俺も損な男だ……」
悠里はそう言うと再び光に顔を向けた
「でも……もう 生きれそうにない この先……」
「そうですか では」
黒いスーツは鉄の塊に指をかけた
「ひとつ……… こいつ 役にたってくれるかな？」
こいつを見ながら悠里は言った
「さぁ どうでしょう 人それぞれ じゃないですか？」
同じく黒いスーツも こいつ を見ながら言った

「少しでも多くの人が立ってくれたら………俺は嬉しい」


パァーーン！！

こいつ に紅が色染めた