アルバと風の世界
ルシアの夢を聞くたびに
「僕もいっしょに旅して吟遊詩人になろうかな」と
ラキアは、冗談みたいに笑いながら言うのでした。

そんなラキアを見ながら、うらやましく思っていました。

なぜか、僕は、ルシアに僕もいっしょに
旅したいと言う事ができなかったのです。
言おうとすると胸がどきどきして、
まっすぐにルシアの目を見ることができなくなります。

意識すればするほど僕の顔は赤くなる一方でした。
そんな僕をじっと見つめて、まるでお姉さんみたいな表情で
「アルバ、大丈夫?顔が真っ赤よ。外の空気に触れすぎて
熱が出たのかしら」おでこに優しく手をおくのです。

僕の顔はますます赤くなっていき、あの日は
本当に熱を出してしまいました。
心配したラキアとルシアが、両脇からかかえて
家に連れて帰ってくれました。

それから3日間熱が出て寝込んでしまいました。
寝ている間、ラキアとルシアが毎日看病してくれました。

ふたりとも優しいんです。僕は幸せものだな・・
しみじみ思いました。

僕は、あまり長い時間花畑にいないほうがいいのかな?
でも、なぜ、こんなに胸がどきどきするんだろう。
まるで心臓が飛び出しそうだよ

16歳のあの日まで、僕はこの体と心の変化の
理由がわからなかったのです。
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