雲からの糸
身体の痛みは慣れると快感
見上げると途方もなく遠くの空まで
細い蜘蛛の糸は 続いている。

無数の地獄からの逃亡者達が
未だに 昇り続けている。

私が 生前 助けた虫たちの数は
相当なものらしい。

しかし、 理不尽なものだ。
なにも知らずに ただ生きて、
死んでいった虫たちは
どうやら 全てのものが
天で その死後をくらしているらしいのだ。

地の底から、伸びる蜘蛛の糸は
一本もない。

生きる知恵のために 
生きる方法のために
その手法を間違えた人間だけが
地獄での苦行に
処される。

人間は そう。
生まれてきた時から、
地獄へ行く可能性を加味されながら、
そのリスクを背負いながら、
浮世に放り込まれてきたのだ。

そういう意味では
まるで
ライフルを持たせられながら、
肉食獣のうようよする野に放たれ
そのライフルの使用の是非を
判断されているようなものなのだ。

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