短編集
「そなた、霊体だな。心の臓の病に侵されているとみたが、名は何と申す?」
僕が霊体?
確かにいつも床に伏せていて、外に出たいと思っていたけど…。
「えっと、佐平…」
「佐平と申すか。妾は、羅后。早く戻るがよい。あまり長くいては、身体に戻れなくなる」
僕は羅后にそう言われたが、身体が動かない。
まるで金縛りにあったように。
「戻れと言われても、身体が動かないんだ」
羅后は僕の身体をなめ回すように見渡し、肩から何かを引っぺがした。
「餓鬼にとり憑かれているとは、何とも呆れた童じゃ。これで動けよう?」
羅后の手には、ネズミくらいの大きさの小さな角の生えた鬼を捕まえていた。
それが離れたとたんに縛りが無くなり、僕は腰が抜けたようにしゃがみ込んだ。