短編集
羅后は捕まえた餓鬼を氷付けにし、口の中へ入れた。
「お、美味しいの?」
羅后は舌なめずりをしながら、視線を僕に向ける。
「美味いわけがなかろう。妾の食すものは、人間の血肉。ザコなど喰らえば腹を下してしまう」
腰に拳を当てながら偉そうに言うが、さっき食べたじゃないか。
しかも氷付けにして。
「何をしておる? さっさと戻らぬか」
「えっと、戻り方がわからないよ」
照れ笑いをしながら言う僕に、羅后は呆れたため息をついた。
「童の尻に、光る鎖があろう? それを辿れば肉体に戻れる。今夜は六花が降りしきる…」
羅后はそう言うと、悲しげな瞳で柔らかく降る粉雪を見上げた。
なぜあなたはそんな悲しげな顔で雪を見るんだろう?
なぜあなたは誰かを待っているかのように、美しく舞うのだろう?