*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
かなり背が高い。
スラリとしたスタイルで高級そうなスーツを身に纏っている。
若い男だった。
恐らく柏木様と同年代の。
誰なんだ―――
このマンションの住人でないことは確かだった。
目立つ容姿―――つまりは今風で言うとかなりのイケメンであり、一回見たら早々顔を忘れない私が、
こんな華やかな男を忘れるはずがない。
「ごくろうさまです、ウチヤマさん」
彼女はいつもと同じ態度で何事もないように挨拶をしてカウンターの前を素通りした。
「すっごいきれーなとこだね」
と男はキョロキョロしながらも柏木様のあとをついていく。
「ふらふらしないでください部長。迷子になりますよ」
部長……迷子??
って言うことは仕事の関係?柏木様の上司か?
いやいや、上司をマンションに入れるってどういう状況だよ!!
いや、上司と部下って関係には見えないけど。
どういう関係だ?
分からん!
と素が出そうになりつつも、それを何とか押し隠し、私は長い夜をイライラしながらカウンターで過ごした。