*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
ここで働いて、
「ありがとう」
と、
「ウチヤマさん」と
“名前”を呼ばれたのは
これで二回目だ。
柏木様が私のことを「ウチヤマさん」と言ったから、モリヤマ様もそれにならっただけだろう。
柏木様が普段から私の名前を呼んでくれていたから。
当たり前のことなのに―――
私の心はやはりほんわかと温かくなった。
私はいつから―――…別れた妻のことを名前で呼んでいなかっただろう。
そして、私は普段言えているだろうか。
やってくれて当たり前だと思っていないだろうか。
娘の未衣は私のその言葉を聞かずとも、別れた妻に代わって、あれこれ家の中で働いてくれている。
家に帰ったらまず言おう。
感謝の気持ちを込めて
「未衣、いつもありがとう」
を。
しかし、それよりも早く言うことがあった。
「超気持ちいい」
北島 康介の台詞、一度呟いてみたかったんです。
私の戯言はお気になさらず。