*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
9月19日
柏木様と彼がどういう関係か勘ぐるのも、やめた。
彼らは公私共にパートナーであると言うことになるのだろう。
はぁ
「羨ましいぜ」
思わず本音が口に出てしまい、私は慌てて手で口を塞いだ。
ちなみにマンションを離れた外なので、誰に聞かれても問題ないのだが。
「あれだな。暗い考えはやめ、やめ」
今日は9月19日。
娘の未依の十六回目の誕生日だ。
注文していたケーキを夜遅くまで開いているケーキ屋に取りに行ったわけだが…
「は!?できてないって!?」
「こちらの手違いでして!!」
と従業員の女の子は泣きそうになりながら頭を下げている。
二十歳前の女の子だ。アルバイトなのだろう。
私もよく似たような年の娘が居るから他人事のように思えない。
「未依、すまん!!手違いがあってケーキができてないようなんだ」
私は慌てて携帯で未依に掛けると、
『ぇえ!!約束したのにぃ。それだからパパはママに逃げ…』
「それ以上は言うな」
私は未依の言葉を遮った。
「今から違う店…」
と言いかけたとき、
「ウチヤマさん?」
聞きなれた声に私が顔を上げると、
柏木様が入り口に立っていた。