*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
「本当に申し訳ございません」
女の子は目頭を押さえながら俯いている。
「いや、もう大丈夫です。他を探しますから」
「他ってもうこの時間ですよ?開いてるお店なんてないんじゃ」
と柏木様が店の外を振り返る。
「ウチヤマさん、宜しければ私が注文したケーキを娘さんに差し上げますよ」
まさかの発言に私は驚き……どころじゃなく固まった。
「い、いや!それはさすがに…」
いつも冷静な私もさすがに取り乱してしまった。
「私もお誕生日ケーキを注文してたんです。あ、柏木ですけど私の分はあります?」
と私の断りを最後まで聞かずして女の子に聞いている柏木様。
「あ、はい!柏木様ですね。柏木様の分はできてます」
と言って慌てて厨房に入っていく。
「注文が二つあって混乱しちゃったんですね、きっと。娘さんの好みに合うかどうか分かりませんけれど、どうぞ受け取ってください」
「…あの、柏木様のご注文されたケーキは誰の…」
あの男のケーキか…
一瞬そう思ったが、
「娘です。
と言っても一緒に住んでないので、雰囲気だけでもと思って購入したので、気になさらなくて結構ですよ?」
ほっ。娘、ね。私と一緒か。
って言うかすごい偶然だな。お互いの娘の誕生日が同じだったなんて。
……じゃなくて。
は――――!!
娘ぇええ!?