*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
ライバルです。
イシカワ君。
「君って人は……」
まったくもって…私は心優しい人間に恵まれている。
コンシェルジュも
捨てたものじゃないな。
「あ、誰も居ないんで“フツー”にしててもらって結構ですよ♪」
イシカワ君。
「君って人は(怒)」
―――
柏木様の近くに居るカンナはかっこよくて金持ちで気が利いて―――
申し分のない男だな。
若干女好きそうな雰囲気ではあるが。
柏木様が泣かされないだろうか。もし柏木様を悲しい目に遭わせようものなら、私はあいつを闇討ちに……
会社の住所も知っているわけだからな。ふふっ
なんて(物騒な)ことを考えているある日のことだった。
土曜日の早番、私が一人でカウンターに控えていると、白いシャツにジーンズと言う姿で彼が私の前を通った。
「おはよーございます、ウチヤマさん」
少しだけ上から見下ろすような格好で首を傾け、腕を組んでるさまは
生意気そうだが、この男の雰囲気によく合っている。
「おはようございます、カンナ様」
カンナの攻撃をなんなんくかわし、私が挨拶するとカンナは一瞬怯んだように眉をしかめた。
「あ、喉渇いたからコンビニ行ってこようかと思って。瑠華はまだ寝てるから」
ルカ―――……
その呼び方が親密さを物語っている。
しかし
この男が言いたいのは―――『彼女は自分のものだ』と言うこと。
「そうですか。お飲み物ぐらいならお電話いただければお持ちいたしますのに」
安心しろ。私が彼女をどうこうできる立場ではない。