*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
「どうしてそんなことをお聞きになるんですか?」
私はちょっと余裕の表情で笑った。
すぐに「いいえ」と即答するのもくやしいから。
私からのちょっとした意地悪だ。
直球勝負を持ちかけるほど、彼女に関してこの男も余裕がないのだろう。
「どうして…って、そんな気がしたから…」
カンナはも少しだけたじろぎながらも何とか答えた。
「確かに柏木様には良くしてくださっていますが、私は柏木様をお客様以上に見たことはありません」
きっぱりはっきり言い切ったが、カンナはまだ疑ったように目を吊り上げている。
勘はいいようだな、小僧。
「ホントかよ」
「ええ、本当です。それに私が柏木様に…恋愛感情を抱くことなどありえません」
「どうして?」
探るように聞いてきたカンナの手に私は自分の手を重ねた。
「私はゲイだからです」
私の発言に、
ずさっ
カンナが面白いほどの素早さで身を後退させた。
「は!マジで??ってかあんた娘が居るんだろ!?る、瑠華から聞いたぞ」
そんなことまで……
ちっ
私は小さく舌打ちして、それでもすぐに取り繕ったような笑顔を浮かべた。