*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
十五階を過ぎた辺りで、
「はぁ…はぁ」
とイシカワ君が息を切らして手すりによろよろと手をついた。
「ウチヤマさん、俺より一回り以上、上っすよね。アラフォーのくせに何でそんなに元気なんすか」
「イシカワ君、さりげに私の年齢をバラさないように」
「あれか…ヤンキーパワーか」
「イシカワ君、さりげに私の過去を漏らさないように。
って言うか君が来る必要ってある?」
今更ながら聞くと、イシカワ君は目をぱちぱち。
「……そう…ですね。何で俺ついてきちゃったんだろう…」
その答えは。
イシカワ君も―――
うだうだ言っていても、コンシェルジュの仕事に誇りを持っているからだろう。
―――
目的の部屋に到達すると、
ゼーハーゼーハー…
さすがに30階もの階段を全力疾走はこの体に堪える。
それでも
“第三条
コンシェルジュはいついかなるときも笑顔でお客様に接すること”
をしっかりと意識して、
ピンポーン
私はアサノ様の部屋のインターホンを押した。