*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
「だってぇ、それ俺も一緒に選んだから」
「は?」
「パパに香水をあげたいんだけど、何がいいだろう、って相談されて。で、俺がこれだったらどうだろうってすすめたんっスよ?」
「待て。これを貰ったのは冬だぞ?つまりはお前は」
「忘れちゃったんですか?俺、未依ちゃんと同じ中学っすよ♪」
はぁ??
「つまり俺たちは一年前からお付き合いしてたってわけっす」
お付き合い…??それも一年前から―――!?
待て。こんなチャラそうなやついたか?
私は記憶のビデオテープを思い切り巻き戻してみた。
ギュルギュルギュル…
そしてある画像を見て、(それはもうマンション内の監視カメラのような鮮明な画像だ)
「待て!一時停止!」
いきなり言い出した私の隣で、キシモトがびくりと肩を震わせる。
「ズームアップ!」
再び言って拡大すると、
『はじめまして、委員長のキシモトです』爽やか好青年の幼い少年と、確かに私は会ったことがある。
あれは確か未依の三者面談のとき、前の生徒が挨拶してきたんだっけね…
は??あの爽やか好青年、いかにも頭良さそうな彼がこいつ??
「思い出してくれました。さっすが!未依ちゃんが言ってました。パパは記憶力だけはいいから。嫌なこともずっと覚えてるって」
“だけは”って何だ。
しかし…
優等生がチャラ男に。
元暴走ぞ……(みなまで言わないでおこう)、が高級マンションのコンシェルジュに。
世の中、何が起こるかわからないな。