*NOBILE*  -Fahrenheit side UCHIYAMA story-


「だってぇ、それ俺も一緒に選んだから」


「は?」


「パパに香水をあげたいんだけど、何がいいだろう、って相談されて。で、俺がこれだったらどうだろうってすすめたんっスよ?」


「待て。これを貰ったのは冬だぞ?つまりはお前は」


「忘れちゃったんですか?俺、未依ちゃんと同じ中学っすよ♪」


はぁ??


「つまり俺たちは一年前からお付き合いしてたってわけっす」


お付き合い…??それも一年前から―――!?


待て。こんなチャラそうなやついたか?


私は記憶のビデオテープを思い切り巻き戻してみた。


ギュルギュルギュル…


そしてある画像を見て、(それはもうマンション内の監視カメラのような鮮明な画像だ)


「待て!一時停止!」


いきなり言い出した私の隣で、キシモトがびくりと肩を震わせる。


「ズームアップ!」


再び言って拡大すると、


『はじめまして、委員長のキシモトです』爽やか好青年の幼い少年と、確かに私は会ったことがある。


あれは確か未依の三者面談のとき、前の生徒が挨拶してきたんだっけね…


は??あの爽やか好青年、いかにも頭良さそうな彼がこいつ??


「思い出してくれました。さっすが!未依ちゃんが言ってました。パパは記憶力だけはいいから。嫌なこともずっと覚えてるって」


“だけは”って何だ。


しかし…


優等生がチャラ男に。


元暴走ぞ……(みなまで言わないでおこう)、が高級マンションのコンシェルジュに。




世の中、何が起こるかわからないな。




< 45 / 52 >

この作品をシェア

pagetop