*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
と、まぁそんな感じで日常は過ぎて行き、私生活では少々荒れ模様ではあるが、仕事では気持ちを切り替え励んでいた
またまたある日のこと。
「おはようございます、柏木様」
「おはようございますウチヤマさん。あら?」
と彼女は首を捻った。
「どうかされました?」
「ええ、今日ウチヤマさんから香りが香ってこないなって思いまして」
「香り?」
ああ、いつもほんの少量につけている香水のことか。
キシモトが選んだと言ってたから、何かつけたくなかった。
なんて子供じみているな。
「グッチのNOBILE私好きですよ?あの香り」
好き?
ドキリ、と心臓が鳴って思わず心臓の辺りを押さえたが彼女は気にしていない様子で、
「ラテン語で『高貴な』を意味する香水。あなたにぴったりじゃありませんか?
誇り高くてまっすぐで。
あなたは最高のコンシェルジュですよ。
ウチヤマさん」
彼女はそう言って笑顔を浮かべた。
「さすが柏木様ですね。博識だ」
「ふふっ。私は何でも知ってるんですよ。お子さんとお幸せに」
そう言ってちょっと悪戯っぽく笑うと、柏木様はいつものようにヒールを鳴らして遠ざかった。だが途中くるりと振り返ると、
「あ、そうそう。お子さんの彼氏、認めてあげたらどうですか?」
微笑を浮かべて振り返った柏木様。
何でも知ってる―――……
ちょっと待て、柏木!!
俺の何を知ってるっていうんだーーー!!!