愛し
陽平が公園に足を踏み入れると、二人の女の子は何やら笑いながらじゃれ合っていた。ああいうのは女の子同士の特権だなと思うと、ひとつ咳払いをして声を掛ける。

第一印象が大事だと心の中で繰り返し、自分の中で一番好青年らしいだろう笑顔もつくってみた。

「おはようございます! 良い天気ですね!」

「え…」

咄嗟に結衣が陽平の方へと振り向く。

小さい顔を引き立たせるショートボブに、少したれ目気味の大きな目。一七〇センチ近くありそうな身長で、今人気の国民的アイドルグループのメンバーに似ている気がする。

陽平は『当たり』だとガッツポーズを決めた。なんとしてでもメールアドレスの交換まで持ち込みたい。

そう思った時、聞き覚えのある声が耳に入った。

「こんな曇り空で天気良いとか、目まで悪いのね。この馬鹿男」

陽平がその声の主を見遣ると、昨夜自分の股間を蹴り上げてきた眼帯の少女が『当たり』の女の子に後ろから抱きしめられていた。しかも、これから獲物を狩る獣のように陽平のことを睨みつけながら。

「なっ、なんでおまえがここにいんだよ!」

「朝からうるさいわね。私の勝手でしょ、この馬鹿男」

慌てる陽平と、今にも噛み付きそうな真白のやり取りに結衣は首を傾げる。

「ねえ、知り合い?」

「これ以上知りたくないし、関わりたくもないし、顔も見たくないわよ。こんな馬鹿男」

「おい、さっきからその馬鹿男ってなんだよ」

「あ! もしかしてコンビニの店員さん?」

結衣が昨夜の話を思い出したように真白に尋ねた。

「え…なんで俺のこと…」

「そう。昨日言ってた例のね」

「一号と二号のどっち?」

「馬鹿さでいうならコッチが一号」

真白から若干距離を取りながらどこか落ち着かない陽平を余所に、真白と結衣は会話を進めている。とりあえず、『馬鹿男』というのは自分のことらしいが『一号』『二号』とは何なのだろう。

そんなことを考えていると『当たり』の女の子が見上げてきた。うん、可愛い女の子の上目遣いは凶器だと思う。


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