愛し
一方、結衣は真白の怒りを真っ向から受け止めている。

目の前にいる親友は不機嫌を隠す素振りなど露ほども見せない。指のとんとんという動きは再開されているし、眉間の皺だって刻まれたままだ。

しかし、ストローを噛みながら拗ねている様は幼い子供にも見え、なぜか微笑ましく感じてしまう。

「…何笑ってんのよ」

「え?」

あ、やばい。

無意識に笑ってしまっていたのだと結衣は両頬を押さえるが、真白はフンと鼻を鳴らして横を向いてしまった。

―――こういう時、真白はやはり綺麗な子なんだなと思う。怒っている顔がとかじゃなくて。

目を逸らして話もしてないと、立ち寄ったカフェでふと居合わせた他人のような、第三者の視点で見える気がする。そして周りの視線にも気づくんだ。

あの人も、あの人も。あっちの人も真白を見てる。

先ほど声を荒げたからじゃない。眼帯を掛けているからっていうのはあるかもしれないけど、ほとんどの人が真白に恋してるような、そんな目で見てる。通り過ぎる時に真白を振り返らない人なんていない。

本人はその視線を「みんな興味本位でしょ」って言って振り払っているけど、実は羨ましい気持ちもある。一瞬で他人を虜にしてしまう真白が。

だが、親友として心配なこともある。

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