【短編】あの日見た夢は、今。
相手の表情は上手くわからない。けれど、確かに笑ってはいた。
時々、あたしの夢に出てくるのは、まだ幼い男の子。あたしの服の袖を引っ張って、「あそぼー、あそぼー」と言ってくる、元気な男の子だった。
何処かで、見覚えがあった。
その光景も、その状態も。
何処かで、経験しているような――
そんな、不思議な感覚に苛まれる。
「……予知夢なんじゃないの?」
「ほえ?」
朝食に出ていたパンを口に咥えたなり、目の前であたしの話を聞いたお母さんが口を開く。
“予知夢”。
聞いたことのないワードだった。