【短編】あの日見た夢は、今。
4.『アリガトウ。』
――……
――……
PM7:03。
学校から電車で30分程の距離にある自宅。その玄関のドアを、あたしは勢い良く開けた。
「お母さん! お母さん!」
「……ナニ? 帰ってきた早々」
お母さんは呑気に味噌汁の味見をしていた。あたしは味見に使っていた小さな器を奪い取ると、すぐさま残りを飲み干す。
――今日も濃いな、とただ一言。
「え? そうかしら……」
「それよりお母さん!」
あたしはカバンの中から、託された封筒を取り出す。そして、お母さんに渡した。
「ナニ、これ……。見たことある字ね……」
「お母さんの知り合いって人から、預かってきたの」
お母さんの知り合い。
高校時代の同級生。
あの“彼”。
お母さんは、封筒の後ろを見るなり、目を丸くした。どうやら、驚きを隠せないらしい。
「……どうして……? なんでアイツからの……」
――これ、いつもらったの!?と、お母さんは聞いてくる。