私と彼の物語
大切な人
私は今日も海沿いを一人歩く
海は、好き。
...いい思い出は、一つもない気がする
夕暮れで、昼間は真っ青で輝いている色がオレンジ色へと変わっている
いつもの特等席にしている堤防の段差に腰を掛け、私は海の向こうを真っ直ぐに見つめる
ぼやぼやとした夕日が海の中に沈んでゆく
ゆっくり...ゆっくりと。
引きずり込まれそうなほど綺麗に、色がオレンジから黒へと浸食されていく空
私はなぜ耳が聞こえないのだろう