【完】プリンセス
――ゴンッ
「いってぇー」
急に開いたドアに激突して蹲る。
引き戸にしろよなっ!
頭を押さえながら顔をあげた先には、心菜が立っていた。
「ドアの前で何してんの? キモイ」
う……毒舌満開なご様子。
しかも、何も言わない俺に、
「何? 用?」
冷たーく言い放った。
ここまで来たんだ……頑張れ俺!
「あー……部屋入ってもいいですか?」
「……入れば?」
……何だ? 今の間は?
嫌だったのか?
頑張った自分に少し後悔して、部屋の手前で足を止めた。
勢いで来て、心菜の部屋なんて入ったけど……
いつぶりだよ?
昔のピンク一色だった部屋は、落ち着いた雰囲気で、でも女の部屋だって感じになってた。
やべ……今頃、緊張して来た。
「ね、陽呂?」
俺が焦ってる間に、心菜の方から先に話し掛けて来た。
「あ……はい?」
「さっきの……忘れていいから」
え?
さっきのって……。
少し驚く俺に、
「聞こえてたのに聞こえてないフリしてたんでしょ?」
やっぱ……バレてたんだ。
当たり前だよな。
あんな嘘……てか演技? 気付かない訳がない。
「その事で話……」
俺が、やっと話し出した言葉を、心菜は、簡単に遮った。