【完】プリンセス

俺は、薄暗い廊下から、その明るい部屋の前に立ってる心菜の所まで戻った。



少し背を向けてる顔を覗き込みながら。


「いーですよ。別にあんな言い方され……」



“ても気にしてませんから”



俺が続けたかった言葉は、出なかった。



俺が、想像してた心菜の表情とは、違ってて。


まさか……こんな顔してるだなんて思ってもみなくて。


真っ赤にして、少し涙目の心菜を……可愛いと思ってしまったんだ。



正直、そんな顔をする心菜に“ドキッ”と心臓が音を立てた。


「え……」

「ばっバカ!何見てんのよっ?!」


多分、俺は凄いマヌケな顔をしてただろう。

そんな俺の顔を見て、怒り出した。



あ……いつもの心菜だ。



その怒った顔で、俺も我に返った。


「あ……すんません。じゃあ……戻ります」


足早に薄暗い廊下を通った。

少し早く脈打つ鼓動を隠すかの様に……。

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