【完】プリンセス
第二話☆心菜
まだまだ暑い夏みたいな日々が続く中、始まる新学期。
夏休みボケも抜け始める頃……学校では、毎日あの噂。
「江田さんと、陽呂が婚約したんだってー」
「江田さんってお嬢様なんでしょ?」
「だから、江田さんから無理矢理らしいよ?」
「えー最悪ーーー」
「金持ちだからってイイ気になんないでよねー」
毎日、こんな会話ばっかり聞こえて来る。
多分、私が居るのをわかってて、聞こえる様に言ってるんだろう。
これも、陽呂がモテるから。
陽呂は、確かにかっこいいし。
少し悪い感じが女ウケするみたい。
前からわかってた事だったから、それなりの覚悟はあった。
けどね?
別に……そこまで言われる筋合いないんですけど?
そう思って、わざと私のそばで、喋ってる女子を睨んだ。
「江田さん、睨んでない?」
「こわーい」
何が怖いよ?
あんた達の方がよっぽど怖いわっ!
少し離れた距離で睨みあう。
「ちょっと……心ちゃんっ!」
もう、我慢の限界っ!そう思って一歩を出そうとした瞬間。
親友の愛未(マナミ)に止められた。
「心ちゃん……本当に気強いんだから」
「だって! むかつくんだもん」
「そーだけど……ねぇ?」
私を覗き込むかの様に下から栗色の瞳で見つめ、少し柔らかい髪を揺らして、苦笑いをしてる。
愛未は、小さくて可愛くて守ってあげたくなる様な女の子。
私とは、正反対。
昔、愛未にヤキモチ妬いた事もあった位。
本当に可愛い女の子。
「でも陽呂君との婚約、良かったね♪」
「……よくもないけどね?」
「何でーーー??? 陽呂君の事、好きだし……んご」