【完】プリンセス

「脅迫状が届いてるみたいなの」

「脅迫状っ?!」


声が大きくなった。

周りの連中が振り返ってるのを見て『声が大きい過ぎる!』と廊下の端にまで手を引かれ、誰も居ないのを確認して


「そう。心菜さんを連れ去るってさ」

「はぁ?」


何だソレ。
全く聞いてないぞ?

そんな素振りすら見せてない。
いつもと……何も変わらなかったじゃな……


「変わりに10億用意しろ……って要求されたらしいよ?」

「身代金目的?!」


頷いて、周りをまた確認する沙耶。
誰かに聞かれたらマズイ。そんな表情だ。


って……待てよ?

前に誘拐未遂あったよな?
それと同じ犯人か?

あれは、どっかのお嬢様だったけど。
あれも未遂だったし……。

もしかして?!


「でも、それが嫌がらせと同じ理由か探ってるみたいだよ……って陽呂君?」



何で?!

何で俺に言わないかなぁ?



一応、護衛なんですけど?



しかもっ!

柏原に言ってるのがムカツク。


柏原、心菜に気あるんだぞ?
なのに、何で柏原に頼るんだよ。



あー!
ムカツク!



考えながら俺は走ってた。
廊下で擦れ違う人の肩を上手く交わしながら。

必死に走った。



< 177 / 392 >

この作品をシェア

pagetop