【完】プリンセス
「脅迫状が届いてるみたいなの」
「脅迫状っ?!」
声が大きくなった。
周りの連中が振り返ってるのを見て『声が大きい過ぎる!』と廊下の端にまで手を引かれ、誰も居ないのを確認して
「そう。心菜さんを連れ去るってさ」
「はぁ?」
何だソレ。
全く聞いてないぞ?
そんな素振りすら見せてない。
いつもと……何も変わらなかったじゃな……
「変わりに10億用意しろ……って要求されたらしいよ?」
「身代金目的?!」
頷いて、周りをまた確認する沙耶。
誰かに聞かれたらマズイ。そんな表情だ。
って……待てよ?
前に誘拐未遂あったよな?
それと同じ犯人か?
あれは、どっかのお嬢様だったけど。
あれも未遂だったし……。
もしかして?!
「でも、それが嫌がらせと同じ理由か探ってるみたいだよ……って陽呂君?」
何で?!
何で俺に言わないかなぁ?
一応、護衛なんですけど?
しかもっ!
柏原に言ってるのがムカツク。
柏原、心菜に気あるんだぞ?
なのに、何で柏原に頼るんだよ。
あー!
ムカツク!
考えながら俺は走ってた。
廊下で擦れ違う人の肩を上手く交わしながら。
必死に走った。