【完】プリンセス
「愛未さんっ! ……っ心菜さん来ませんでした?」
教室で座ってた愛未さんの机に手を突き、乱れる息で尋ねた。
「陽呂君?! 心ちゃんに何したの?
メール来てたわよ?」
「そうですか……で、心菜さんは?」
キョトンとした顔で、俺を見上げ『へ? まだだけど?』と、不思議そうな顔をした。
「え?」
俺の背中に冷や汗が流れる。
走ってきたから、今……そう今の今までは熱かった。
熱かったはずなのに、一気に冷める体。
変な汗が流れたんだ。
「さっき、今から行くから話聞いてーってメールがきてて……って陽呂君?
何かあったのー?!」
話の途中で、また教室を飛び出した。
今は、説明してる時間はない。
おかしい……。
俺が走って来た途中、心菜は居なかった。
道は、あれしか使わないはず。
なら、絶対どこかで擦れ違うはずなんだ。
なのに……。
靴…靴だ。
靴箱までの道のりが、こんなに長いと思った事はない。
角を曲がり、見えた靴箱。
靴箱まで、こんなに急いだ事も初めてだった。
もし……靴がなかったら。