【完】プリンセス


「ちょっと……ね。
てか壱……陽呂に嘘言わなくても」


“ヤラれそうだった”なんて。

その時の陽呂の顔は見てない。
見てないけど……そんな事、聞いたら陽呂は絶対後悔すると思う。

だって……この傷でさえ、こんなに後に引きずったんだよ?


「いいんだよ、あれくらい」


なんて笑ってるけど。


困るのこっちなのになぁ。
壱のバカ。


少し拗ねた表情の私に、ふと哀しい微笑みを見せた。


「でもさ? そこまでされて……それでも川合がいいの?」

「……うん」


真っ赤になった顔を見て、壱が笑う。
さっきみたいな哀しい微笑みじゃなくて、本当の笑顔。


「バカだねーこんないい男振ってさ?」

「いい男? どこに?」

「おいっ」


嘘だよ、嘘。

確かにちょっと強引でウザイけどね?
壱はいい男だと思うよ。


だけど、私には陽呂じゃなきゃ駄目なの。

陽呂が……。

どうしても陽呂じゃなきゃ駄目なんだ。





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