【完】プリンセス
第一話☆陽呂
残暑が厳しい夏休みも残すところわずかな、8月の終わり。
うるさい蝉の鳴き声が減り、夜になると鈴虫の鳴き声が、どこからか響く。
ちょうど……そんな頃。
俺は、人生の岐路ってのに立っていた。
「なんて喜ばしい、お話なのかしら♪ ね、陽呂?」
「え? あ……うん?」
誕生日を明後日に控えた俺の横には、素晴らしいプレゼントだって喜ぶ親。
前には、プレゼントになるらしい……
江田 心菜(エダ ココナ) 17歳
そして……後2日で18歳になる俺、川合 陽呂(カワイ ヒロ)
ちょうど今!
婚約が決まったり……したりして。
俺ん家は、代々江田家に仕えてた使用人。
仕事は、護衛……ボディガードってのをしてたらしいけど。
実際は、じぃちゃんの代まで。
親父は、しなくていーのに立候補したらしい(ただのバカだ)
でも、俺は自由気ままな生活をしてた……。
訳でもない。
熱血親父が、
『お前も江田家に尽くしなさい!』
とか意味不明な事を、物心がついた時から繰り返し言われ続けてた。
だから、選ぶ権利などなく幼稚園から、心菜と同じ学校。
勿論、心菜の護衛を見よう見まねでしてきたんだ。
特別何かを習ったわけでもないし。
習おうと思った事もない。
ただ、ガキの頃から、心菜を1人にさせない。
コレだけをずっと守ってきた。
そして今日……婚約まで決まった。
ちなみに俺と心菜はデキてない。
親の勝手。
理由は、『昔から決めてた』とかナメた理由だった。