【完】プリンセス
心の中なんて、聞こえないから当たり前なんだけど。


どんどん下がる唇に戸惑いを隠せなかった。



そして、胸元にキス。



――ズキン


え?

胸元に伸びる手は、1つの傷の上を撫でた。



「まだ……跡残ってるな」


胸元に残る薄くなった傷……でも消える事のない跡。

陽呂と同じ……。
私達を繋いでくれた傷。


「誰も……気づかないよ。薄くなってる」

「俺が気づく……」


その傷に、優しく優しくキスをする。



痛くもないのにウズウズしてしまう。

もっと触れていて欲しい……そんな事まで思ってしまったの。

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