【完】プリンセス


林君の部屋には、寅さん。

私が部屋に入ると寅さんまで出されてしまった。


無表情で、こっちを向いた。
でも目線は、私の足元。


『林君? どうしたの?』

『愛未ちゃんてさ……』


何?!


『好きな奴……居るんだってね?』



ドキンッと大きく唸る心臓。

今まで見てた林君から目線を逸らしてしまった。
明らかに動揺して、泳ぐ目。


『……え?!』

『やっぱり……』

『何? 急に?』


私へと向けた目線は、あまりにも顔が真剣で、ちょっと恐かった。

やっぱり、逸らしてしまう。
見透かされてしまう。そう思ったから。


『川合から……聞いたんだ』


陽呂君から?


『何を?』


サッパリわからなくなった。

どうして陽呂君から聞くんだろ?
何を聞いたんだろう?!



『……俺、愛未ちゃんが好きなんだよね』



ポツリと言った言葉に、一瞬フリーズしてしまった。




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