【完】プリンセス
「きゃっ……」
「え? あ……大丈夫ですか?」
ウザイ3時間スペシャルを観てた俺が横を見た瞬間、パジャマとフローリングに零れたジュース。
「あ……ビチャビチャだ……私、何してんだろね? あはは……」
俺を見ず、何故か一気に喋る。
テーブルの上のタオルに手を伸ばしたら、同じ時に手を伸ばし、ほんのちょっと触れた手。
なのに、あからさまに手を退ける。
……あぁ?
俺の手が汚れてるかの様な扱い。
でも、俺……気づいたし。
心菜の手……震えてるよな?
フローリングを笑いながら拭く心菜を、上から見下ろしながら、意地悪な俺が出た。
だって、さっきの手退けられたの……。
ちょっと根に持っちまったしな?
フローリングを拭く心菜の手に重なる俺の手。
ビクッって感覚が手だけで伝って来る。
「え? ……あ…陽呂、拭けな…いし……ね?」
くくっ。
パニクリ過ぎだって。
噛みまくりじゃん?
もっと意地悪しよーって思ってたのに、何だか心菜を見てたら出来ねーし。
ちょっと残念。
「もう、綺麗ですよ?」
拭き終わってるのに、未だ拭き続けてる。
そして……俺と目を合わさない。