【完】プリンセス

「きゃっ……」

「え? あ……大丈夫ですか?」


ウザイ3時間スペシャルを観てた俺が横を見た瞬間、パジャマとフローリングに零れたジュース。



「あ……ビチャビチャだ……私、何してんだろね? あはは……」


俺を見ず、何故か一気に喋る。

テーブルの上のタオルに手を伸ばしたら、同じ時に手を伸ばし、ほんのちょっと触れた手。


なのに、あからさまに手を退ける。



……あぁ?

俺の手が汚れてるかの様な扱い。



でも、俺……気づいたし。
心菜の手……震えてるよな?



フローリングを笑いながら拭く心菜を、上から見下ろしながら、意地悪な俺が出た。

だって、さっきの手退けられたの……。



ちょっと根に持っちまったしな?




フローリングを拭く心菜の手に重なる俺の手。

ビクッって感覚が手だけで伝って来る。


「え? ……あ…陽呂、拭けな…いし……ね?」


くくっ。

パニクリ過ぎだって。
噛みまくりじゃん?


もっと意地悪しよーって思ってたのに、何だか心菜を見てたら出来ねーし。

ちょっと残念。


「もう、綺麗ですよ?」


拭き終わってるのに、未だ拭き続けてる。

そして……俺と目を合わさない。

< 383 / 392 >

この作品をシェア

pagetop