【完】プリンセス
「心菜さん……そんなイキナリ襲ったりしませんよ?」
笑いを堪えて発した言葉……。
まさか、そんな表情で返ってくるなんて思ってもみなかったんだ。
涙をいっぱい溜めた瞳。
真っ赤な頬。
唇を少し噛んで、俺を睨む。
「……え?」
「……ひ…ろの……バカ」
そのまま、俺の手を振り払い部屋を飛び出した。
あ……俺、もしかして失敗した?
いつもなら、もっと意地悪してるじゃん?
あー……
心菜、すげー緊張してたんだ。
それなのに、俺……本当にバカかも。
そう思った時には、俺も部屋から飛び出してリビングを見渡してた。
いない……。
心菜の部屋か?
玄関のドアの音はしてねーしな。
そのまま、リビングを挟んで真っ直ぐ先にある心菜の部屋へ向かおうとした……その時。