【完】プリンセス
忘れもしない幼稚園の……。
5歳の……。
あの日も暑い夏だった。
心菜の弟、美鶴(ミツル)と、庭にある大きな木に登る事にハマってた。
心菜は、周りの御付から駄目だって言われて出来なかった。
そう……いつもなら、御付きが見てたのに。
その日に限って居なかったんだ。
俺も一応は、止めたけど……。
ガキん頃のしたい!
好奇心てのは、止めれないもんで、楽しそうに笑う心菜と一緒に登ったんだ。
もうすぐで、俺等の特等席!
そこの枝……ってところで、足を滑らした心菜。
俺の差し出た手を掴んだのに……。
俺には、心菜を支えるほど力がなかった。
そのまま落ちた俺と心菜。
落ちている間、ガサガサと葉っぱの音と、美鶴の声。
目を閉じる前に見た真っ青な空。
次に目を開けた時には、大きな木が俺の真上にあった。
そして落ちる時に、木の枝が引っ掛かったんだろう。
胸元を切っていた。