【完】プリンセス
先に部屋を出た俺達。
歩き出した俺の後から、扉の前で立ち止まったままの心菜が聞いて来た。
「陽呂……結婚しないの?」
「え?あぁ……籍ですか?」
「そう」
それは、心菜の為……なんて言えねーわな。
バレたくないんだろ?
柏原を好きだって気持ち。
「心菜さんも、大変でしょうし。もしかしたら、気が変わる事もあるかもしれませんしね?」
「……私の?」
「はい」
そーだろ?
柏原の事もあるし……な?
最終、無理だった時で……俺は構わねーよ。
あぁ……まただ。
何だこの胸の痛み。
「……勝手よね」
え?
何?
勝手???
自分勝手?
心菜の事?
え?何……勝手???
「分かったわ。卒業した時にまた考えれば」
「はい」
心菜の寂しそうな顔を、俺は疑問に思う事しか出来なかった……。
そして、この胸の痛みを理解するのは、もう少し後の事。