【完】プリンセス
「心菜さ……ん、いつから……そこに?」
俺の……俺の気持ち……聞いた?
一瞬、呼吸を忘れた。
冷や汗ってのは、これの事を言うんだな。
「ごめ……話聞くつもりは……」
「だから……いつから……」
その場に重たい空気が流れてるのがわかった。
遠くで聞こえる音も、真っ赤な夕焼けも……
全てが止まったかの様な感覚だった。
「私と……壱……のキスの事知ってた……の?」
あぁ……そこからか……。
良かった。
俺の気持ちは、聞いてなかったんだな。
俺は、大きく息を吸い込み、真っ直ぐ心菜を見た。
「はい。でも、柏原も心菜さんが好きなんでしょう? 良かったじゃないですか、おめでとうございます。」
よし、上手く言えた。
黙ったまま少し俯く心菜。
……答えないって事は、柏原の気持ちも、知ってたんだな。
良かった……。
勢いで言っちまったから、柏原がまだ気持ち伝えてなかったら俺、ただのお節介野郎だしな。
「陽呂……」
美鶴が俺を悲しそうな目で見てたけど、俺は目で『黙っててくれ』って見つめ返したんだ。