こうして僕らは、夢を見る
彼等を見ていれば、とある光景が脳裏に映し出された。私はボーッと白いボールを追い掛けラケットを振る彼等を盗み見しながら脳裏の記憶に意識を傾ける。










ポニーテールの女の子とショートカットの女の子。


私とポニーテールの女の子は笑いながら何かを話している。場所は高校のグラウンド。時は放課後。懐かしすぎる光景が甦る。


いまとは似ても似つかない爽やかなショートカットヘアのワタシ。ポニーテールの女の子は高校時代の私の友達・聡美(さとみ)元気な聡美は何だか嬉しそうに私の肩を叩いている。


これって確か――……







『蕾(つぼみ)!選手登録されてたじゃん!?凄いっ!次の大会で一年なのに出れるなんて!』

『へへ!まぁーね。私は走るしか能がないからね。選ばれるのは当たり前かな?』

『またまたーっ。努力の賜物でしょ!いつも一人で残って練習してんじゃん!』

『あ。バレてた?』

『バレてるよ。』

『『―――…ぷっ。ははは!』』





笑いながら肩を組む私達。これは私が輝いていた時の記憶だ。光陽(こうよう)高校陸上部のユニフォームを着ている私が未だ生き生きしていた時の光景。


何でこんなことを今更思い出してるんだろう。きっと――――――目の前にいる名前も知らない彼等を自分と重ねているから。未練がましい自分が嫌になる。既に私は高校を卒業している。成人も済ませた。それに私はもう。











「すみませ〜ん。」

「………っ!」




ふと掛けられた声に肩が揺れる。それは黙って盗み見していた為、少しの後ろめたさのからだった。何を言われるのかと私は年下の少年に対して身体を強張らせた。
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