こうして僕らは、夢を見る
「なあ、司。お前も行きてえよな?蕾ちゃんの家。」
止めろおおおぉお!
何てことを!?誰も司くんの決断には逆らえないと分かっていながら!確信犯だ!貴様は確信犯だ!私が籃君に一体何をした‥‥!?
もしや、あれか!?ポテト勝手に食べたこと?ポテト7本で怒ってるの?怒ってるから私の家に押し掛けて仕返しとか?
ごめんなさい。本当にごめんなさい。もう食べません。勝手に食べてごめんなさい。バイト中なのに食べてごめんなさい。
謝るから!土下座する!ポテト買って返す!弁償するから!だからまじでお宅訪問とか止めてくれ。切実にお願いします。
「――――え、蕾さんの家?」
俯いて何かを考えていた司くんが籃君に声を掛けられた事で漸く、ハッとしたように顔を上げた。
その行動に首を傾げた。余りにも司くんらしくないと思ったから。思考がどこか別のところにあるようでシャキッとしない。
「行くか?司。」
え。私の意思は無視ですか?
朔君が私ではなく司くんに賛否を確認している。まだ来て良いとも言ってませんけど。言ったところで聞く耳も持ってくれなさそうだけどね。
僅かに司くんは悩んだ表情を浮かべた。だけど瞬時に厳しい表情に切り替えて私を見た。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
無言で見つめあう私達。
はじめは綺麗な蒼眼で見つめられ狼狽えたが――――――――――徐々にその瞳の真面目さに吸い込まれるように見つめあった。
司、くん?
声を掛けたいけど、掛けれない。瞳に真剣さを帯びる司くんに私が声を発しても良いか戸惑った。
やけに真剣な瞳を向けてくる。ただ私も見つめ返す―――――――――――この空気がやけに息苦しく感じた。
そして少し経ったとき。先に目を逸らしたのは司くんの方だった。
「‥‥‥いや。止めとく。」
そう言い私を見ていた視線がスッと下に向けられる。
え、なに?どういうこと?
司くんが私から目を逸らしたことで心無しか異様な雰囲気が漂う。涙君も欠伸なんてしていない。
この空気は、気のせいではない。重い空気が犇々と感じられる。