こうして僕らは、夢を見る
「どうして私なんかを待ってたの?」
アルバイトという名目で私はテニスコートに行くことは無かった。あの日っきり。スケジュール張もバイトで全て埋まるほど忙しかった。だけどそんなの只の言い訳にしか過ぎない。
私なんかが行っても意味は無いと思ったから行くのを控えていた。私なんて居ても居なくても変わりは無いだろうと思ったから。
だから私には「待っていた」という言葉は不思議で仕方ない。待つ理由が何処にある?私なんか待たなくてもテニスは出来る。
そう考える私に司くんはアッサリと告げる。
「そんなの簡単ですよ。」
そして―――――司くんは意図も簡単に私の悩みもぶっ飛ばした。
「会いたいからです、蕾さんに」
――――‥‥は?
度肝を抜かれてしまった。
目を見開いて司くんを凝視する。
もしかすると間抜けな声が口に出ていたかもしれない。
「会いたいから待ってたんですよ。ただ、それだけです。」
何なんだろう‥‥この子達は。
擦れていないと言うか、なんと言うか。口には出来ない心の凝りが渦巻く。
馬鹿正直だし。真っ直ぐだし。目映いし―――――私とは正反対。例えば。私が黒なら君たちは白。決して交わらない対極な存在だと思った―――――そう、思わされる。
私の返答を待っているのか6つの瞳が私を射る。
その瞳に答えるかのように呟き始める。私は突き刺さる視線を感じながらポツリポツリと心の声を零していった。