こうして僕らは、夢を見る
しかし私の考えとは裏腹に少年は足元を指差した。
え。なに?
指される場所を辿ればゆっくりとしたスピードで――――コロンッと転がってきた白く柔らかそうなボールが汚れたスニーカーの爪先に当たった。
「取って貰ってい〜?お姉さん」
……あ、ボールね。
足元に転がるボールを拾い密かにホッと胸を撫で下ろした。いちゃもん付けられるかと思った。胸倉掴まれて「何見てんだゴラアア!」とか言われたらどうしようかと思っちゃったよお姉さん。
考えが杞憂で心底から良かったと安堵しながら拾ったボールを少年に向かって投げた。
「サンキュ〜」
お礼の言葉を聞くと私は素早く帰ろうとした。このまま此所に居ると色々込み上げる物があるから。耀いた彼等が目映くて少しだけ眼を逸らしたい衝動に駆られた。
グッと唇を噛み締め逃げるように来た道を引き返すために階段を降りようとしたとき。
「おね〜さんもテニスすんの?」
―……何故か引き留められた。