こうして僕らは、夢を見る
すると突然帽子が取られた。同時に頭に乗る温もり。驚いて見上げると優しく微笑んでいる司くんが私の頭に手を置いていた。


眉を下げたまま不甲斐ない顔で司くんを見上げる。


これじゃあ、どっちが歳上なのか分からないよ。





「そんな顔しないで下さい。」

「‥‥‥でも」

「蕾さんは笑顔のほうが似合っていますから。」

「‥‥‥そんなことな、」

「本当です。笑顔の蕾さんは一番可愛らしいですよ。」





――‥‥キザだなあ、司くん。



ニコニコ笑う司くんにしみじみと思った。





「これから毎日来なかったら、また店に押し掛けますから。」

「‥‥え」

「返事。」

「あ、は、はい?」

「ふふ。約束ですよ?」





やっぱり今日店に来たのも押し掛けだったんじゃん――――――――――――って。






「ま、毎日!?」





慌てて司くんを見上げようとすると―――――――視界が真っ暗になった。



はじめはこの暗さに訳が分からなくなったが瞬時に帽子の鍔だと分かった。帽子を再び被らされたみたいだ。それもかなり深々と。鍔が視界の邪魔をする。



鍔を持ち、上にあげると―――――‥





「‥‥‥びっ」





び、ビックリしたあっ、



慌てて帽子の鍔を上げると間近に司くんの顔があった。至近距離に思わず叫びそうになったのを耐える。





「また明日。」





フンワリと笑顔を浮かべた司くん。至近距離でこの爽やかな笑顔は目に毒だよ。笑顔に殺られた私はコクコクと首を縦に振り何度も頷くだけで言葉にならない。



恰も首降り人形のような私にフッと笑った司くんは私の頬に手を添えて先ほどのように唇を耳に近づけて囁いた。












「良い夢を。






―――――‥Good night.」






流暢な英語で言われた言葉。

本日2度目の胸の高鳴り。





彼等が私に振り回されていることと同様に。私も彼等に振り回されてるみたい。お相子、だよね?


去っていく6人の後ろ姿をワタシは赤く染まった耳を押さえながらボーッと眺めていた。











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